【提供 三毛猫さん】    エンゼルの稚魚。


by mefmef
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カテゴリ:おタコさん(完)( 33 )

金さんは部屋に入ると大急ぎで水槽にステンレスのボールを浮かべ、その中にハコフグを水ごと入れました。ハコフグちゃんは元気そうです。

トロピカルランドの住民たちにも異常はありません。

風呂に入ったりしているうちに一時間が経ちました。
ボールの水を水槽に流し込むと、ハコフグは水面近くをヘリコプタのように泳ぎはじめました。

なんか、にぎやかになってきたなぁ。と、思いニヤケる金さんでした。

それじゃあね。おやすみなさい。

電気を消して、ベッドに入りました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

目を覚まして、金さんが最初に見たのは異常な光景でした。

まるで、牛乳の大きなパックをぶちまけたように白濁した水槽。

え、うん? なんじゃこりゃあ。

頭の中も真っ白になりました。

・・・・・・・・・・・・・・

水槽の前まで動くのに何分の時間が掛かったでしょう。照明を付けて一番最初に目に入ったのは水面で腹を上にして浮かんでいるハコフグでした。次に、やはり水面でパイロットフィッシュが横になっています。底面の左にはハオコゼ、中央にはクマノミが倒れています。イソギンチャクは触手を体の中に飲み込んで縮こまっています。死の世界がそこにありました。

金さんはのろのろとベッドに戻りました。
天井に押し潰されそうな気がして布団に潜り込みました。
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by mefmef | 2005-02-19 16:51 | おタコさん(完)

電車

真鶴から御徒町までは約1時間。

電車のシートに発泡スチロールを膝にかかえた金さんがいました。
ポケットでは携帯用のブクブクがべ~と鳴いています。

ときおり蓋を開けてニタニタしながら覗き込む金さんは、ちょっと不思議な存在でした。
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by mefmef | 2005-02-19 09:26 | おタコさん(完)

ぼうず

休日で真鶴に帰った金さんの今日の客に、あの常さんがいました。

>> おう、金ちゃん。久しぶりだな。

いらっしゃい。

>> なんだか、イソギンチャク飼ってるんだってぇ?

いやあ、常さんとこのヒラマサに影響されちゃって。

>> うちのヒラマサで、イソギンチャクかい。
   金ちゃんらしいやな。

・・・

>> 今日もでかいの揚げたるぜ。

(今日こそは可愛いの釣っちゃるけん)



魚群探知機には魚影がずっとエコーされていました。

>> 金ちゃん。お魚ちゃん来ませんよぅ。

いやあ、下のほうには沢山いるんだけどねえ。常さん、ボケがきちゃってアタリが分らなくなってんじゃないの?

>> おう、言ってくれるねぇ。
   そういう可愛いこといってると、クジラ釣ってこの船転覆させちゃうよ。

あはは、坊主釣って泣くのが落ちだね。


その後、魚場を変えたり、仕掛けを替えたりしましたが、客達の竿はピクリともしませんでした。
金さんも常さんの目を盗んで釣り糸をたれてみましたが、駄目です。


>> おおっ。お~い。あた。おた。

なんだよ。来たか?

>> なんだよ。ハコフグだよ。それも、幼稚園生だよ。

幼稚園生?! 捨てないで。それ、捨てないでえ!

>> なに金ちゃん。どうすんの、これ。


客達は釣果なく、一日を終えました。
船底の生簀には4センチ弱のハコフグがポツンと泳いでいました。
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by mefmef | 2005-02-18 10:02 | おタコさん(完)

ひまな休日


三連休を迎えた金さんは真鶴に帰るのは明日にして、水族館ヒカルを覘きました。あれやこれや見てから店をでました。不忍池のほとりを歩いて徒町に向かいます。不忍池にはアヒルの群れが水遊びをしていました。良く見ると蓮の葉陰から小さな魚がチョロチョロと姿を見せます。しばらく観察して、前ならこんな小さな魚たちに見惚れることは無かったなあ。と、思って笑ってしまいました。

なにか釣れるのか?

>> え~。ザリガニ。

ちゃんと殺さずに飼ってやれよ。

>> うん。

子供たちの青いバケツの中には5~6匹のザリガニがうごめいています。

>> おじさんもやりたい?

遠慮しとくよ。おじさんはイソギンチャクで忙しいから。

>> イソギンチャク釣るの? どこにいるの?

遠い南の国の海にいるんだよ。おじさん忙しいから、またね。

>> ばいば~い。 
   こんど南の国へイソギンチャク取りに行くときは連れてってねえ~。


金さんは徒町の勧銀の路地を入って壷屋というジャズ喫茶に入りました。
前は向かいにもイトウというジャズ喫茶があったのですが今はここだけになっていました。

キャノンボールアダレイの古いあまりジャズらしくないレコードがかかっていました。
ポルカドッツ&ムーンビームスの甘酸っぱいメロディを聞きながら、さっき出会った少年たちの屈託のない笑顔や、水遊びするアヒルの姿を思い出す金さんでした。
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by mefmef | 2005-02-15 10:02 | おタコさん(完)

平穏な日々

金さんのトロピカルランドは水が安定してきたのか平穏な日々がやってきました。

イソギンチャクも本屋さんの立ち読みで知った。シジミの生餌をどうやら食べてくれているようです。

シジミはトンカチでグシャッと潰して、中身を刻んで与えるのですが、小学生の時のカエルの解剖を思い出して辛くなります。
でも、考えてみれば、牛も豚もニワトリも誰かが殺さなきゃ人間だって生きていけないんだなぁ。と、金さんは思って辛抱しました。

どんくさい海のムカデも一度少量の餌を与えて、パイロットフィッシュを騒がせて、ハオコゼがやるきを起こして身震いするのを確認してから、二度目を投入することで解決しました。

水も澄んでいます。

今度は真鶴に帰った時に海草を潜って採ってくるかな。と、真剣に考える金さんでした。
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by mefmef | 2005-02-14 10:36 | おタコさん(完)

釣りごっこ

この頃、金さんは釣り船に乗ったとき、客に隠れて釣りをするようになりました。

隠れなければならなかったのは、釣りなんかするやつはバカだと公言していた自分にうしろめたさが有ったのと、客に笑われる恐れがあったからです。

金さんが釣りたかったのはトロピカルランドの住民です。決して焼いたり煮たりして食べたかった訳ではありません。その為、幼魚が狙いだったのです。針もクチボソ用の一番小さな物を用意しました。餌もゴカイの尻尾の端切れを付けるのです。客に見つかれば大うけされるに違い有りません。

こそこそやっているので、釣果はあがりませんでした。
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by mefmef | 2005-02-11 10:39 | おタコさん(完)

酔っ払い

>> あら、金さん。いらっしゃい!

休日で真鶴に帰った金さんが和ちゃんの赤提灯を覘くと、カウンターの向こうには板前らしい男が和ちゃんと一緒に出迎えました。

そして、和ちゃんは金ちゃんと呼ばず金さんと呼んだのです。

>> あら、金さん。いらっしゃい!

何度もなんども、金さんの頭の中で和ちゃんの声がリピートして響きました。

金さんは、その言葉で全てを察しました。


和ちゃん。いつものやつな。

>> はい、金さんいつものやつ! って言ってもアンタわかんないわね。
   いいわ。わたしがやるから。アンタ、お酒つけて。
   どう? 金さん。おさかなちゃんは。

いやぁ、イソギンチャクが死んじまったよ。まあ、生き物は死ぬものだからよ。
仕方ねえべさ。あはは。新しいの買ったからよ。寂しかないけどな。あはは。

金さんは明るく陽気に振舞いました。珍しく酒に飲まれて、海岸で倒れて寝ました。
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by mefmef | 2005-02-08 17:49 | おタコさん(完)

さよなら、和ちゃん。

玉田の置いていったイソギンチャクを水槽にいれると、和ちゃんは更にみすぼらしく哀れに見えました。ゆらゆら揺れる新しいイソギンチャクと、触手も既に縮んで見えなくなったカズチャンを見比べて、金さんはため息をつくばかりでした。

三日もすると、和チャンは更に小さくしぼんで、角の丸い金太郎飴のようになってしまいました。すでに生きている気配はありませんでした。

金さんは諦めて和チャンをアパートと塀の間のわずかな土に埋めました。
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by mefmef | 2005-02-07 10:48 | おタコさん(完)

ガールフレンド


>> カネヤン居てるぅ? おらん、言うで。

おらん。

>> な、言うたやろ。おもろいやろ、カネヤン。

#> あはは。

なんだあ?

>> あ! びっくりした。居てるやんか。

#> こんばんわ。

しのぶさん! えっ?

>> え、やないがな。カネヤン。
   ガールフレンド。やなくて、オカマフレンドのしのぶ。

えっ? オカマフレンド?

>> この前、飲んだ時、カネヤン先に帰ったのは覚えてんねん。
   その後、社長が何時帰ったのか、気が付いたら、
   朝になってて、この子の家に居てん。
#> うふふ。
>> ワシなんかした? て、聞いたら。
   なんもせえへん。キス以外は。言いよんねん。
   ワシその言葉聴いて、責任とらなあかんかな。て。

なんか、頭が痛くなってきた。帰ってくれ。

>> そんな言わんと。はい、これ。おみやげ。

イソギンチャク?

>> ワシかて、根津の住民や。熱帯魚屋がどこにあるか知ってるわいな。

えっ?

>> そこの熱帯魚屋でカネヤンとこのキントトの話したら、
   よう覚えてたがな。金色のトトあんまり扱わん魚やてな。
   カネヤン買うたイソギンチャクはこれと同じやいうて。

ふ~ん。でも、和ちゃんは一匹だけだよ。代わりはおらん。

>> えっ?なんて言うた?和ちゃん?このイソギンチャクのこと?

いや、あの・・・ミナミカズ、チャンコ、イソギンチャクって学名なんだよ。だから、略してカズチャン。

>> へ~。エライ名前やな。しかし、そのカズチャン、エライしぼんでまったなあ。
   殆ど、輪切りの親指みたいになってもうて。
   ああ、可哀相。

・・・・

>> ワシらな、これからうどん食べに行くけど、カネヤンもどや?

いや、頭が痛いから、寝る。
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by mefmef | 2005-02-04 10:20 | おタコさん(完)
金さんが水槽に入れるとハオコゼはフワフワと底面に着陸したっきり動きません。
じっと海面を見ているような、ぽ~っと気を失っているような、そんな感じです。

翌朝、ご飯タイムがやってきました。


バシャバシャ、パクパク、ギュィ~ンパクパク、バシャバシャパクパク、パクパク。

フニャフニャ、フニャリンフニャリン、パクパク。

餌がもう無くなったころ、断然やる気をだしたハオコゼがブルッと身震いしてフワァ~ンと浮いてきますが、後の祭りです。

金さんは頭をかかえます。また、どんくさいのが一匹増えました。
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by mefmef | 2005-02-03 15:38 | おタコさん(完)